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【社会人博士】研究室選択

社会人博士に限らず、研究室の選択はその後のキャリアパスに大きな影響をあたえる(と私は感じている)重要な分岐点です。ただでさえ重要なのに、在職での通学となると時間や体力の制約もあるので、なおのことその重要性は増します。 私が博士課程でお世話になる研究室を探す前には、研究室探索に関する手記をいくらか拝見したのですが、私のように「出身とは異なる、未経験分野の、実験系研究室に、在職のまま通学する、既婚者」という記事はなかなか見かけませんでした。こうして書いてみると字面上なかなかチャレンジングな選択な気もしますが、結果的に「良い研究室を選ぶ事ができた」と感じています。 この記事では、私の考える良い研究室とは何かを述べた後、どのようにして良い研究室を探り当てたかを記載します。私と共通する部分のある方にとって、研究室の選び方、探し方の参考になれば幸いです。 私にとっての良い研究室 自分のペースで博士号をとれそうな研究室。一言で表すならこれが私にとってのいい研究室です。 自分のペースとは、ゆっくりというより、時間の制約が少ないという意味です。より具体的には、通学が容易である事、マシンタイムに余裕がある事、出席必須のゼミがない事などです。また、仕事との兼ね合いの都合上、実験の数を打つ事が正義、という雰囲気があると厳しいとも考えていました。専業学生同様の実験数は現実的に困難です。 また、博士号を取れ"そう"というのは、まずは博士号取得に必要な投稿論文の質的あるいは量的ハードルが低いことです。それから、自分が面白いと思える研究テーマに取り組める事。そして、具体的な解はないけれども最も重要なのが、指導教官です。この人の元でならやって行けると思えることは大事ですが、なんだかんだ言って博士号を取らせてくれそうな、言葉を選ばなければ、多少甘そうな先生が好ましいです。実際に博論を審査する先生方は別の方々であっても、指導教官の後押しがなければ博論提出さえままなりません。もちろん厳しい研究室に入った方が、力はつくのでしょうし、その後の自信にもなるのでしょうが、私の場合未経験分野への挑戦も兼ねている点から、あまり背伸びせず確実に博士号を取ることを重視しました。 良い研究室の条件まとめ 気の赴くままに書いてしまったので、軽くまとめておきます。 ■良い研究室:自分のペースで博士号がとれそ...

【社会人博士】家族や会社への相談・報告

前回の記事 で、家族や会社に相談、了承を得る前に、ざっくりとイメージしておいた方がよいことについて書きました。この記事では、それを踏まえて、早い段階で入学の意思を伝えておくべき相手、伝えるべき内容について記載します。 妻への相談 子供はまだいませんが、私には妻がいます。博士に通うことになると、一緒に過ごせる時間をはじめとして色々と環境が変わります。これらについて正直に説明し、了承を得るところが第一の関門です。幸いにして、私の妻は私の意思を大いに尊重してくれ、特にもめることなく了承してくれたと記憶しています。感謝。 以下では妻に伝えておくべきこと、話し合っておくべきことを記載しています。ポイントは 考えうるデメリットを思いつく限り 伝えておくことです。相手もパッと聞いただけではすべての不都合を想定できるとは限りません。しかし後からデメリットに気づかれてもめることになっては面倒です。相手がデメリットに気づいていなくても、積極的に伝えましょう。 入学理由 とはいえ、まずはモチベーションを語ります。できれば、それによって相手が得られるメリットを用意しておくとよいのですが、正直伴侶にとっての明確なメリットがあるケースは少ないと思います。もちろん私が 記事にした ような、キャリアパスの広がりを主張してもよいのですが、選択肢が(理論的には)広がるだけで、実際に良い職に就けるわけではないですから、あまりそこをアピールしても、無理やり説得している感が出ると予想します。 素直に「自分勝手な理由だけど、どうしても博士号に挑戦したい。間違いなく迷惑はかけるけど、協力してくれないか」という方向性で行くのがおすすめです。愛を誓い合った二人ですから、強い思いがあれば理解してもらえるはずです。 収入 当然最も大切なことのひとつです。仮に財布を完全に分けていたとしても、一緒に旅行に行く、共用家電を購入する、などのイベントの際には双方の収入状況がかかわるので、確実に伝えておくべきです。 また、私のように基本的には大きな収入源とはならない予定であっても、仕事との両立が厳しくなって、会社の勤務体系を変える、退職する可能性もこの段階で示唆し、反応を見ておく方が好ましいと考えます。 博士号取得後の転職の可能性 これはもちろん転職を考えている方の場合です。伴侶の転職、特に引っ越しを伴うものはそれなりにストレスで...

【社会人博士】入学決心後方々へ相談する前に

社会人博士課程に入学することを決めたら、家族や会社に了承を得る必要があります。しかしその前に、ある程度通学周りのことを調査し、イメージを高めておくと、話がしやすいです。また、場合によってはこの段階でそのハードルの高さに面食らって、意思が揺らぐかもしれません(私がそうだったという意味ではないですよ)。この記事では、私が方々への相談の前に調べたことや、その間に考えたことについて記載します。 相談前にイメージを高めておきたいこと 方々に了承を得るために、調査を通してイメージを高めておきたいことは下記のようなことです。 ①使用する会社の制度 ②入学予定大学 ③有休取得頻度 ④家庭財政の変化 ①から③は会社と相談する際に必要です。④は家族と相談する際に必要です。また、①から④を踏まえて、現実的に入学が可能かを自身で精査することになります。 では、これらを少し具体化するために私が調べたことを見ていきましょう。 会社の支援制度の調査 まずは、会社の支援制度に使えるものがないか調べました。もちろん相談段階で会社側から提案がある可能性もありますが、会社の上司もすべて把握しているわけがないので、自分で調べましょう。支援が狙い通りに受けられるかはまだわかりませんので、あくまでも希望を明確にするというだけです。この希望を元に方々に報告、相談する事になります。 結果的に私は会社からの時間的、金銭的支援は受けずに入学する事を選択しました。その為、あまり深い話はできないのですが、うちの会社にあった制度なかった制度ともに、長短や注意点などを思うがままに書き残しておこうと思います。ご自身の会社の制度を調べる際のご参考になさってください。 大学に出向 私の職場では過去には業務として大学に出向する際に、学費なども会社負担で博士課程に通っていた人がいました。(ところが、そうやって博士号をとった人がことごとく退職したため、ここ数年はその様な例はありません。) 私も、当時の研究開発テーマに絡むところで、大学に出向する価値のある仕事を提案できれば、もしかしたらそうやって入学する事も可能だったかも知れません。金銭的、時間的には社会人であることをこの上なく活かした博士号の取り方だと思います。 しかし、ここまで激しく支援されると、どうしても辞めにくくなります。それに、現在の会社に求められている研究テーマに限られてしま...

研究と開発の違い

この記事では、研究と開発の違いについて私の考えをまとめています。また、それを踏まえて、私が研究の方が好きだと思うに至った経緯を話させてもらいます。 なんとなく研究よりのことがしたいと思う気持ちはあるものの、なぜ研究なのか、開発ではダメなのか。そもそも研究と開発の違いはなんなのか。そんな方のヒントになれば幸いです。 定義/知識作りか物作りか まずは、研究と開発を自分の中でどう定義しているかを話します。 研究と開発は非常に近いもので、実際日本企業には「研究開発本部」「R&Dセンター」など、研究と開発が併記された部門名が散見されます。ですから、なんとなくニュアンスでしか違いが分からず、明確に区別できていない方も多分きっといるでしょう。 両者の違いは、調べたらいくつか説明が出てきます。割と感覚に馴染む意見も多く、私はそれらを少々アレンジして研究と開発を区分けしています。 調べて出てきた物の中で、言葉としてしっくりきたのは「知の創造/知の応用」( 参照 )。どちらもなんかカッコいいですね。次は直接研究開発の違いを謳う記事ではありませんが「知の創造/知の具現化」という言葉を使っています( 参照 )。 このあたりをベースに咀嚼して、平易な日本語にすると「知識を作るのが研究、物やサービスを作るのが開発」と今のところ捉えています。 もちろん、より迅速な開発のためには新しい知識が必要になる場合が多いですし、新しい知識を作るために新しい装置が必要になる場合もあります。また、どちらにせよ先例の調査は必須であるなど、共通する部分もあります。以上のように、両者は連続する部分、共通する部分があり、厳密に切り分けできない場合もあります。研究開発と併記されることが多い理由はそういったところにあるのでしょう。 以降は、「知識を作るのが研究、物やサービスを作るのが開発」だと思って読み進めて下さい。 両者の好悪 開発について 開発の魅力 なんと言っても、初めから「用途のある物」を目指しているところだと思います。現代において「なんの役に立つか分からないけどできそうだから作ってみた」ということはどんどん減ってきています。ほとんどのものが元々なんらかの役割を想定して開発が始まっていますので、成功すれば誰かの役に立つでしょう。特にB to Cの開発であれば、実際に開発物を自ら拝むこともできるのですから、喜...

社会人博士入学の理由

博士課程への動機は人それぞれでしょうが、私の動機を記せば、近い悩みを抱えてる方の、あるいは企業研究者か博士進学かを迷っている方の参考になるかと思い、記事にする事にしました。 この記事はあくまで動機について記述し、その他実際に感じているメリットデメリットは、また別の記事で書かせてもらいます。 それではいってみましょう。 研究職としての転職先を増やしたかった これが大きな理由です。そう考えるようになった経緯を話をさせて下さい。 もっと研究がしたい こう思い至った理由や、そもそも自分にとって研究がどういうものかは、(書いたら割と長くなってしまったので)また別記事にするとして。数年のメーカー研究職としての勤務をまっとうするなかで、今よりも研究をできる職に移りたいと考えるようになりました。 まずは部門転換を考えました。しかし、調べた限り社内では自分はまだ研究してる方だと思える状況でした。 そこで、研究職縛りで転職活動を始めたわけですが、割とすぐに挫折します。 研究職募集の少なさ・ハードルの高さ 実際に求人を見て、研究職募集の少なさを痛感しました。一般に、企業の研究部門は人数がそもそも少ないです。加えて、開発や営業などの部門と比べて労働環境が良いらしく、退職者も比較的少ないことが、募集の少なさを後押ししているとか。また、研究にリソースを割けなくなっているのは、他社も同様と言うことかもしれません。 とはいえ興味のある求人も完全なゼロではなかったので、2社だけ実際に応募しました。しかし、どちらも書類で落ちました。こうして自分の目指す、研究職の門の狭さと、自分の市場価値の低さを痛感したわけです。 転職の選択肢がないなら広げる 選択肢を広げる方法はいくつかありますが、その中から私は新しい研究テーマでの社会人博士を選んだわけです。 客観的には、今の職で成果を上げて箔をつける手もあるのだと思います。しかし、従事しているテーマの世界情勢を鑑みて、今のテーマで成果をあげても良い選択肢は増えないと判断しました。 対して博士を取れば、大学や研究系独立行政法人という選択肢が増えます一応。また、新しいテーマに取り組む事で、専門分野の拡大強化にも繋げられると考えました。テーマの選択には成功したと思っていて、専門分野の拡大強化という狙いは期待以上に満たしていると体感しています。 主な動機はこちらで、あとの...

自己紹介

初めまして。朝倉です。この記事では、自己紹介と合わせて、このブログの方針などを語らせてもらいます。 最低限の自己紹介 改めて朝倉純一と言います。本名ではなく、ハンドルネームです。30歳既婚にして、在職のまま、いわゆる社会人博士として大学院に入学しました。現在、博士課程の真っ最中です。 もちろんそこに至るまでには色々な悩みを乗り越えてきたわけですが、その際には、先人達の経験談から大いに学ばせていただきました。ですから、私の経験談もどこかに残しておけば、いつか誰かの参考に、励みになるのではないかと考えブログを書くことにしました。と言えば少し聞こえはいいですが、実のところ、色々稀有な経験をしたら、それを誰かに聞いて欲しくなった、というのが本音です。 不慣れなことも多いですが、応援していただければこれ幸いです。 このブログの方針 前述の通り、基本的には博士課程にまつわる経験を書き記して行く予定です。しかしせっかくですから、気が向いたら趣味の話や日常の話も書くつもりです。他にも何か聞きたい事などあれば、コメントでもお問い合わせでもTwitter( @J_Asakura_221 )のDMにでもご要望下さい。 私の本名、所属などの直接明示は極力避ける予定です。強い理由は無いのですが、なんとなくネット上での身バレは控えるもの、という感覚がまだ拭えていないものですから。世代の問題でしょうか。しかし、こう言った経験談は「いかに自分の環境と違い環境での経験か」が情報の価値を左右するものです。もし、やんわりと伏せた部分が気になった方は、クローズドにお問い合わせいただければこっそりともう少し具体的なお話や、公の場では出しにくい話もさせていただけるかも知れません。 私の環境 男性です。入学当時、30歳、既婚、子なしでした。ありがたい事に、妻も派遣社員として働き、家計を助けてくれています。 在職のまま入学し、今のところフルタイムで勤務しています。大手メーカーの研究員です。いくつかのテーマを経て、今は次世代デバイスの研究開発に取り組んでいます。会社からの時間的・経済的支援はなく通学しています。 大学では理学系研究科物理学専攻に所属。基本的には実験系の研究室です。仕事や修士での研究とは異なるテーマに取り組んでいます。 最後に これから記事にする多くのことは一般論ではなく経験談になる予定です。一般論で...